本当の君を好きになる





「──可鈴の事、好きでも何でもない。」



「…………え?」



え?好きじゃない?

じゃあ、あの言葉の数々は?

私に対する、悲しげな笑顔は?

全部騙されてる私を、嘲笑うためのものだった訳?




悲しくないといえば嘘になる。

でも、どこかで安心している自分もいる。

桐谷くんは、私の中で掴めない人だったから。

それも今思えば仕方の無い事なのか。

だって、彼は私に対して真の姿なんて見せなかったから。
私に対して、何の感情も無かったから。




心に溜まっていた物が、ストンと落ちる感覚。

何か、すごくスッキリした。




私は、直登の腕からスッと逃れる。


直登は、私の事を心配そうに見つめる。






「直登……ありがとう!!教えてくれて良かった!」




私の言葉に、目を丸くする直登。


その様子がおかしくて私は声を出して笑う。



「変な顔しなくて良いから!!あーあ、何かスッキリしたー!!」



< 47 / 308 >

この作品をシェア

pagetop