本当の君を好きになる



「ほら、別れた俺にはもう用なしでしょ?さっさと帰りなよ。」


「え?あ、うん……。」


「何しんみりしちゃってるの?」


「うーん……何だろう。せっかく知り合えたのに、これっきりっていうのも寂しいよね。」


「何それ?今さら俺の魅力に気づいたの?」



そう冗談交じりに言って、クールな笑みを浮かべる。



「瀬戸さん分かってる?俺は、君を騙して君の好きな人まで傷つけた、最低な男だよ?もう近寄らないのが普通でしょ?」


「そう言われればそうなんだけどー……だって、今の桐谷くん、私好きだもん。」


「……!?」


「やっぱりね、人っていくら偽りの姿で飾ったって、限界があるでしょ?それなら、こうやって本当の姿を出せる人と一緒に、本当の事を言って、本当の笑顔で笑い合えるのが、一番だと思うよ?だからね、今の桐谷くんは、本当に輝いて見える。」


「ハハッ……。何言ってんだよっ……。」



私は、桐谷くんの手を握ると目を見つめる。


彼と、ようやく、きちんと目が合わせられた気がする。





「これからよろしくね!桐谷くん!!」


「───いい。」


「……へ?」


「桐谷くんじゃなくて……湊でいい。」


「分かった!!湊くん!よろしくね♪」




私がそう言うと、湊くんは優しい笑顔を見せてくれた。


付き合ってた頃の、偽りの笑顔じゃなくて、本当の笑顔。


私もつられて笑った。



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