本当の君を好きになる




そこまで言ったところで、直登は大雨が降る校庭に飛び出した。私は、驚きで目を見開く。



「──やっば!!冷たっ!!」



「ちょっ、直登!?風邪引く──」



「ほら!走って帰るぞ!!甘い展開なんか期待してんじゃねぇぞ!!」



「そっ、そんなんじゃないもんっ!!!!」



私もそう言うと、雨の中に飛び込んだ。

あっという間に体がびしょ濡れになって気持ち悪い。


でも……それ以上にすごく楽しい。




「ちょっ、直登!!走るの早すぎっ!!」


「うるせぇよ!早くついてこい!!濡れるぞ!!」


「も、もう濡れてるし!!!!」


雨の勢いがすごいので、二人とも必然的に大声での会話になる。

すると、直登がようやく足を止めてくれた。




「お前、靴が濡れるの気にしてるから遅くなるんだよ!ほら、ついてこい!」



そう言うと直登は、私の手を握る。


まさかの行動に、私の心臓の音は急激に早くなる。


雨に濡れて体は冷たい筈なのに、赤く染まった頬と、繋がれた左手だけが、とても温かかった──。



< 64 / 308 >

この作品をシェア

pagetop