本当の君を好きになる
「可鈴、悪いんだけど飲み物取ってきて?」
その言葉も、耳には入ってこなかった。
いまだに、手は離されないままだ。
「おーい、可鈴?」
何だろう……。
直登が、どんどん大人に近づいていっているのが怖い。
何か、私だけが置いていかれているような……私だけが大人になりきれていないような……すごく寂しい感じがする。
私の知っている直登は、もういないのかもしれない。
直登にもきっと、好きな人の一人や二人はいて、その人に振り向いてもらうために頑張っているのかもしれない。
直登だって、立派な男の子なんだから……。
そう考えると、悲しくて寂しくて、私はギュッと直登の手を握り返していた。
「……可鈴?」
「──直登はさ……。」
気づけば、私は声を発していた。
直登は、心配そうに私の顔を見る。
私は、構わず続ける。
「直登は……好きな人って……いる……?」