本当の君を好きになる
嘘つき
「──お、おはよう!」
そう言って肩をポンポンと叩かれ、俺は振り返る。
その瞬間、胸が高鳴るのが分かった。
でも、俺は平常心を心がけて、答える。
「おはよ。」
目の前で、頬を赤らめる彼女、瀬戸可鈴はいつ見ても可愛い。
本当に可愛い。
でも、そんな言葉は彼女の前では一切出さない。
そんな様子も出さない。
だって、俺は彼女の事を騙して利用したんだから。
今さら、好きなんて馬鹿馬鹿しい事は言えない。
「湊くん……ちょっと相談が……。」
「何?面倒くさそうな予感しかしないんだけど。」
「まわり……生徒がチラチラいるよ?」
彼女の言葉に、俺はハッとする。
そうだ、ここは学校だった。
彼女の前では、ありのままの自分を出せるからって油断してた。
「瀬戸さん、ちょっと向こう行こうか。俺で良ければ相談くらいいくらでも乗るよ。」
俺の言葉に、瀬戸さんはクスクスと笑う。
そんな彼女さえもいとおしい。
はあ……遠慮なんてしなければ良かった。
もっと、自分の気持ちに正直になっていれば良かったのに……。