本当の君を好きになる
「──嘘だったんだって。告白。」
「……え?」
「学校で王子を演じるための練習だったんだってさ。馬鹿みたいだよね。一人で舞い上がって、返事はどうやって返そうって考えて。」
私は、笑いながら話しているが、湊くんの表情は真剣なままだ。
「せっかく湊くんと練習したのに、全部無駄になっちゃったね?ごめんね。面倒くさがりの湊くんが、あんなに頑張ってくれたのに。本当に、申し訳ないよ。でも、何かスッキリしたっていうか何というか──」
その瞬間、湊くんは私の手を握った。
その手は、プルプルと震えていた。
「……何、笑ってんだよっ……。何馬鹿みたいに笑ってんだよっ……。泣けよっ!!無理して笑ってるところなんて、見たくねぇんだよ!!何のために、家まで連れてきたと思ってんだ?瀬戸さんが、どれだけ泣いても俺が側にいてやれるからだろうが……!!」
そう言われた瞬間、枯れたはずの涙が再びブワッと溢れ出してきた。
涙を拭う気にもならなくて、その雫はポタポタと下へ落ちていく。
湊くんは、私の隣に移動すると、抱き締めてくれた。
温もりが、優しさが、鼓動が伝わってきて、私は声をあげて泣き続けた。
湊くんは、そんな私をずっとずっと抱き締めて、離さなかった──。