会いたいとか、さみしいとか
最終の飛行機に乗ってとんぼ返りということにはならず。
今日は一泊して、明日ちょっと支店に顔を出してから東京に戻ることになる。

大島リーダーからは「忘年会しましょう」と言われて。
ホテルにチェックインの手続きをし、指定されたお店へ行く。
店員さんに案内されたテーブルには先客がいた。


「智樹…」

「おつかれ」


弄っていたスマホからふと視線を上げてあたしを見た。
隣りには座れない。
と、なると向かい側。
向かい合うのもなぁ…。


「座んないの」

「うん…」


悩んでいたところで大島リーダーが来た。


「遅くなってすみません。あ、栄さんも来てたんですね」


大島リーダーはマフラーを外し、コートを脱ぐ。
あたしがそれを待っていると、「相田さんは奥へどうぞ」と言われた。
ここで押し問答をするのもカッコ悪いため、あたしは奥に座る。
智樹はスマホをテーブルに置いて、メニューを広げた。


「ビールでいい?」

「あ、はい」


頷くと、そのやり取りを見ていた大島リーダーが店員を呼び止めビールを注文した。


「相田さんが栄さんとよく仕事してるって聞いたので呼んじゃいました」


職場とはうってかわって、リラックスした表情の大島リーダー。
「呼ばなくていいのに」とは言えず。
あたしは当たり障り無く、智樹に「ひさしぶり」なんて挨拶をした。





***





とりあえずグラスを合わせて飲み始める。


「ほんとすみません。クリスマスに」


大島リーダーが改めて頭を下げた。


「気にしないでください。特に予定も無いので」

「え。そうなんですか」


あたしは苦笑いで返す。
目の前に本人がいてこの話題って…。
智樹は我関せずで、ビールを飲みながらメニューを見ている。


「彼氏いますよね」

「うん、まぁ」


大島リーダーの質問に、「目の前にいるよ」と思いつつ答える。
どうにかして話題を変えたい。
あたしはそのまま同じ質問を大島リーダーに返す。


「大島リーダーは?クリスマスの予定とか」

「昨日、二人で過ごしました」


しあわせそうな笑顔で答える。
あ、そうだよね。
一緒にいるだけで、そういう表情になるよね。
なんだか自分が卑屈になってる気がする。

あたしは早々にジョッキを空にしてお代わりを頼んだ。
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