こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
殴られそうになっても表情一つ変えず、怯えたり恐がりもしねぇ。

男でも顔を歪ませるくらい当たり前だってのに、こいつは男より肝が据わってんのか?


「やせ我慢してんじゃねぇよ」

「やせ我慢なんてしてないよ。男は女を殴るものでしょ?」

「…」

「付き合ったり結婚してケンカになったら、男は女を殴るでしょ?」

「…それ、本気で言ってんのか?」

「え?うん。全く怖くないと言えば嘘になるけど、慣れてるから平気だよ」


男に殴られることに慣れてるってのか?

普通に考えておかしいだろ。普通なんてそんな知らねぇけど、女を殴る男はカスしか見たことがねえ。


でも冗談を言ってるようには見えねぇし、まさか本気で…


「ダーリン?」

「──」


顔をのぞき込まれ、はっとした俺は、振りかざしていた手を下ろした。


「どうしたの?」

「…なんで脅しが効かねえんだよ」

「え?なに?」


こいつの言うこと成すことは、俺には理解不能だ。


日本語で話しているはずなのに、どうやっても解読できねぇ。難しすぎる。


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