こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
「どうせ校内にいることはわかってんだ。今はこいつを先に連れてこうぜ」

「そうだな」


薄汚い笑みを浮かべた北栄の奴らに、わたしは両脇から腕を掴まれ強く引かれた。


「やっ、離してよ!痛いっ!」

「うるっせぇ!」

「どこに行くの?!わたしに何の用なわ…」

「黙ってろよくそアマ!」

「──」


廊下中に響いたかと思ったくらい、強い音で頬を打たれた。

喋っている途中だったから口の中を切った。

外側から感じる熱い痛みと血の味。急激に抵抗する気力を無くす。


どうしてすぐに手を出すの?本当に男はわたしに手加減というものを知らない。


「お、もう見つけたのか」

「晋さん!」


…この人、あの時薬を差し出した…


「先公の野郎、もうサツ呼びやがったから俺らは早くずらかるぞ。深瀬は後でいいわ」

「「「うっす!」」」

「──と、その前に」

「──!」


晋という人が不意打ちにわたしの口を覆うようにハンカチをあてがう。


突然のことに抗う気にさえならなかった。


薬品ぽい匂いがしたかと思うと、力が抜け一気に意識が遠のいていく。

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