こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
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「ねぇ、いい加減起きてくれない?」

「…ん…」


鈍い痛みを感じ目を覚ます。


聞き覚えのある声。

不快感さえ覚えるその声に重い瞼を開け、ぼんやりとする意識の中うっすらと目に映ったのは、自分史上最高に会いたくなかった人物。


「あんたが起きないとおもしろくないでしょ。そろそろ深瀬が来るっていうのに」


わたしの頭頂部の髪の毛を後ろに引き下げながら、冷たく笑う澤田──。


ああ、この笑顔、できることなら一生見たくなかった。こんな性悪に整った顔なんて与えるもんじゃないよ、神様。


…あ、でもよく見るとケンカの傷跡が残ってる。この間深瀬くんにやられた時のかな?絆創膏まで貼って、綺麗な顔が台無しだわ。


「もう来るんでしょ?」

「ああ、向こうの奴らから連絡入ったからな。血相変えて走り出したって」

「あははは!すごいね~!愛ってやつ?こっちの指示通りこの状況で一人で来たら、くそ笑えて拍手でも送ってやるよ」


アレルギー反応を起こしそうなくらい、全身が拒絶してる澤田の口調。言葉。


何か言い返そうとしたのに口が動かないと思ったら、これって猿ぐつわ?無駄に疲れるわ。

今時こんなんする人いるの?この間はガムテープだったのに。

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