こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
──俺も金沢と同じ行動に出るところだった。んなことしても無意味だと、少し考えれば容易くわかるってのに。


「落ち着いてられるかってんだ!咲良が心配じゃねーのかよ!」

「てめーはほんとに頭悪ぃな!んなわけねーだろ!」

「だったらこんなとこでダベッてる場合じゃねぇだろーが!」

「だから…っ!」

「いいから落ち着けよ!」

「──っ」


森野の本気の一喝に憤っていた金沢もさすがに止まった。


「俺だって同じ気持ちなんだ。でもどんなに心配でもそれが却って逢川の迷惑になったら何の意味もねぇだろ」

「…咲良の迷惑…?…なんでだよ…なんで心配することが迷惑になんだよ…わけわかんねぇよ…」


立ち上がっていた金沢はぶつぶつ言いながら、悔しそうに、物悲しそうにソファに座り込んだ。


──馬鹿な金沢。

俺らみてぇなガラの悪ぃ奴らが逢川んちに行ったら、逢川の親や周りの奴らにいい顔されるわけねぇだろうが。

それこそ逢川が悪く見られちまう。

まぁ、こいつにんなことわかれって方が難しいだろうな。


実際俺でさえ頭ではそう思っていても、今すぐに走り出したい気持ちがでかい。押し殺すのがやっとだ。

むしろ馬鹿な金沢のお陰で抑えられているのかもしれない。金沢が騒いだから冷静になれた部分もある。

金沢が馬鹿である意味助かった。
< 499 / 524 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop