こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
「そう!中学の頃、生徒に横暴な校長先生の車に学校の二階からペンキをかけたとか!」

「んなことかよ。なにが武勇伝だ」

「暴走族の総長にならないかスカウトされて断ったとか!」

「当たり前だろうがめんどくせぇ」

「あとはリンチしてた人達をこてんぱんにやっつけたとか!」

「だからそれのどこが武勇伝…」

「極めつけはスリ集団を壊滅させたって!」

「金沢が財布盗まれたって騒ぐから…って、それがなんだっつーんだよ!」

「素敵!また惚れ直しちゃったじゃないっ!ダーリン大好き!」

「黙れくそ女。でけぇ声出すな。見つかるっつーの」

「ダーリン、照れないのっ」

「うっぜぇな。早く消えろ」

 
…本当は、悪い話も聞いた。


一番荒れている時期は、誰でも構わず暴力をふるっていたって。


それこそ目が合うだけで因縁をつけて、有無を言わさず殴り倒したとか。


何度も警察のお世話になり、次に何かあったら確実に少年院行きだ。

そう、赤城くんは真面目な顔をして呟いていた。


それを聞いたわたしの胸は、小さなマンホールができたみたいだった。

なんとも複雑な心境。言葉に表せないとはこのことなんだと実感した。


あの得体の知れない噂達、当たらずとも遠からずってとこだったんだね。

当たっていると言えば当たっていたのか。

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