完璧な彼は、溺愛ダーリン
気付きたくなかった気持ち。
「……栞」
ぽつりと私の口から漏れた。
栞も私を見て驚いていた。
今日がもしかしたら二人が出かける日だったのかもしれない。
なんてタイミング悪いんだ。
こんなに人がいるのに、バッタリ会うなんて。
私は二人から視線を外すと、ぐいっと望くんの腕を引っ張った。
「行こう」
「え、でも」
「ううん、大丈夫」
戸惑う望くんの腕を無理矢理引っ張って行こうとするが、その手をぐいっと掴まれた。
―――――――葛木さんに。
「三石さん、話があるからちょっと来て」
「……すみません、私この人と一緒にいるので」
視線を逸らしたまま、ぶっきらぼうに答える。
だけど、それで引き下がってくれる葛木さんではない。
「ダメ。色々わかったから連れてく」
「は!? え、ちょ、ちょっと」
ぎゅっと私の手を掴むと、葛木さんは私の言葉を無視して急に走り出した。
望くんと栞の方を振り向くが、二人とも突然の事で唖然としている。
人混みの中に紛れ、尚私を引っ張って行く。
ヒールだから葛木さんに追い付くのに精一杯だ。
駅前から少し離れた場所でやっと葛木さんが立ち止まった。
だけど、手は離れない。
立ち止まって気付いたけど、ポケットの中でケイタイが震えている。
きっと望くんか、栞。
確認しようと取り出そうとしたら、それを葛木さんに阻止された。