完璧な彼は、溺愛ダーリン

「出ないで」


それに沸々と私の中で怒りが湧き上がった。
静かに口を開く。


「……急に、何なんですか」


息があがったまま、私は葛木さんを睨みつける。
怯むことなく彼は真剣な顔で私を見つめた。


震えたままのケイタイ。
それは暫くして止まる。


葛木さんに腕を掴まれたまま、向き合っていた私はもう一度口を開く。


「急に、何なんですか」


さっきと同じセリフ。
だって、本当にわからない。

突然連れ去って。彼の気持ちは知らないけど、私は断った筈だ。
それに栞と一緒にいたのなら、栞から気持ちを告げられているかもしれない。


望くんだって驚いている筈だ。
急に見知らぬ男に連れ去られたら。


眉間にぐっと皺を寄せると、葛木さんはぽつりと呟いた。


「……急にごめん。でも、我慢出来なかった」

「我慢、って」

「わかってる。三石さんの気持ちを無視してすっごい勝手な事してるって。
でも、三石さんを誰かに奪われたくない」


ハッキリとそう告げた彼は射抜くように私を見る。
胸が苦しい。何でそんな事言うんだ。


葛木さんに振り回されっぱなしだ。
私の手を更にぎゅっと握る。
< 101 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop