完璧な彼は、溺愛ダーリン
「出ないで」
それに沸々と私の中で怒りが湧き上がった。
静かに口を開く。
「……急に、何なんですか」
息があがったまま、私は葛木さんを睨みつける。
怯むことなく彼は真剣な顔で私を見つめた。
震えたままのケイタイ。
それは暫くして止まる。
葛木さんに腕を掴まれたまま、向き合っていた私はもう一度口を開く。
「急に、何なんですか」
さっきと同じセリフ。
だって、本当にわからない。
突然連れ去って。彼の気持ちは知らないけど、私は断った筈だ。
それに栞と一緒にいたのなら、栞から気持ちを告げられているかもしれない。
望くんだって驚いている筈だ。
急に見知らぬ男に連れ去られたら。
眉間にぐっと皺を寄せると、葛木さんはぽつりと呟いた。
「……急にごめん。でも、我慢出来なかった」
「我慢、って」
「わかってる。三石さんの気持ちを無視してすっごい勝手な事してるって。
でも、三石さんを誰かに奪われたくない」
ハッキリとそう告げた彼は射抜くように私を見る。
胸が苦しい。何でそんな事言うんだ。
葛木さんに振り回されっぱなしだ。
私の手を更にぎゅっと握る。