完璧な彼は、溺愛ダーリン

私は彼から視線だけ逸らすと言った。


「離してください。人がいるじゃないですか」


声が震えている。それに気付いたけど、知らない振りをした。
それを全て無視して、葛木さんは話し出す。


「彼女にはハッキリと断った。それに、三石さんが好きな事も言った」

「え」

「泣かれちゃったけど、でも俺彼女に三石さんを嫌いになって欲しくなかったからちゃんと話した。
最初からそのつもりで彼女の誘いを受けたから」

「……最初から」

「うん、最初から」


それから、ふって笑うと続ける。


「俺、誘われたの初めてじゃないしさ、他は全て断っていたけど、彼女と三石さん……仲良かったし。
俺の所為で仲悪くなるのとか嫌だから」


何も言えなかった。
そして、どれほど彼が私を想ってくれているかがわかってぎゅうっと胸が締め付けられる。

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