完璧な彼は、溺愛ダーリン
「そこ、笑わない。いたいけな恋する男子だったんだから」
「あはは、だって。葛木さんって、結構ピュアですよね」
「そうだよ、ピュアなんだから笑っちゃダメ」
「ふふ、善処します」
でも、きっと笑っちゃうんだろうな。なんか、ギャップあり過ぎな気がする。
会社の人はこんな葛木さんも知っているのだろうか?
可愛いなんて言ったら怒られちゃいそうだけど。
それから、一時間ほどして私と葛木さんはお店を後にした。
マスターは帰り際、「またお越しくださいね」と微笑んでいた。
また葛木さんと来れたらいいな。
「駅までまた送ってもいいかな」
「はい、大丈夫です」
その言葉は私から自然と出てきた。断る理由もなかったから。
スッと差し出された手が私の手を掴む。
ぎゅっと握られ、それに返す様に私もぎゅっと力を込めた。
びくっと葛木さんの体が揺れ、恨めしそうにこっちを見て来る。
「……拒否しないんだね」
「はい、嫌じゃないですから」
「そっか」
すぐに前を向いた葛木さんはぼそっと一言。
「嬉しいや」
と呟いた。