完璧な彼は、溺愛ダーリン
トクントクンとゆっくりと鼓動が速くなっていく。
ああ、好きだな。そう心の中で思う。
もう感情にセーブをかけなくていいんだ。
そう思った途端、私の中で好きが加速していっている気がした。
「やっぱり混んでるね」
平日のこの時間だ。アルコールが入った人も多くて、電車内は騒がしい。
私を見送ってからだと、葛木さんは終電ギリギリじゃないだろうか。
「そうですね。あの、葛木さんは時間大丈夫ですか?」
「さあ」
とぼけた様子で肩を竦めながら笑う葛木さん。
さあって……。間に合わなかったらどうするつもりなのだろう。
まさか、タクシーで帰るつもり?
いくらかかるか考えただけでも恐ろしいんだけど。
「間に合わなかった時の事なんか考えてなかった。
今は三石さんと一緒にいたかったから。だから、間に合わなかったらその時考えるよ」
「そんな、間に合わないなら送ってもらわなくても」
「はい、ストップ。俺が好きで送りたいって言ってんだから。
三石さんは何も考えなくていいし、心配しなくていいの。
これは俺のワガママなんだよ?」
「……う」
そう言われたら何も言えない。