完璧な彼は、溺愛ダーリン


「あんまイケメンが来ると、栞がそっちに行きそうで嫌だわ」


もう二人はとっくにこの場からいないけど、二人がいた場所を見つめて加藤君はぽつりと呟いた。

栞が今すぐに気持ちを切り替えられるとは思えない。
それでも、私は加藤君を好きになってくれないかなって切に願った。

その感情に葛木さんは関係ない。
加藤君は栞を幸せにしてくれるから。間違いなく。


「両想いって簡単なようで難しいよな」

「……本当だね」


しみじみと言った加藤君に、私は静かに頷いた。


「だから、頑張れよ。三石」

「え」

「タイミング逃したら後悔するぞ」

「……」


そう言って、私の頭をぽんっと一度叩く。
加藤君には葛木さんが好きだって伝えていないし、望くんの事しか言っていないからどっち?と、思ったけれど。
これはきっと葛木さんに対してだ。


私はその言葉を噛み締める。
まさに言うタイミングを逃して、栞を無駄に傷付けてしまったと後悔していた。


もっと早くに言うタイミングはあった筈。
映画に誘われた時に言えば良かったんだ。
< 142 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop