完璧な彼は、溺愛ダーリン

「了解了解。あ、いらっしゃいませ、おは……」


お客さんの姿が見えたから、元気よく挨拶をしようとしたが途中で止まった。
その相手が葛木さんだったからだ。


「おはよう、三石さん」

「お、おはようございます」

「俺、本当にうっかりしてた。時間も待ち合わせ場所も伝えずに行っちゃってさ」

「えっと」


横目で加藤君を見れば、ちらっとこちらを見てばっちし目が合った。
別にここでこうやって会話をする事はある。


でも、相手はあのスパダリだ。
栞がスパダリスパダリと連呼しているのは加藤君だって知っている。


「昨日も寄ったんだけど、いなかったから今日ならいるかな…と」

「そうですか」

「仕事終わったらここで待ってる」


そうやって渡されたのは、どこかのカフェの名刺だった。
そこには葛木さんの連絡先も添えてある。

綺麗な字で書かれた携帯の番号。
やっぱり葛木さんはこんなとこも完璧。


「今日はお客さんじゃないんだ。ごめんね。それじゃ」


五分と滞在せず、葛木さんはその場を後にした。
断る隙さえ与えてくれなかった。
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