完璧な彼は、溺愛ダーリン
「すみません、はい、こちら鍵です」
「ありがとうね」
加藤君から会員証と鍵を受け取った常連さんは笑顔でロッカールームへと向かった。
そのお客さんがいなくなった後、加藤君を肘でつつく。
「告白したりするの?」
「秘密」
「全部秘密じゃん」
秘密主義か!別にそれぐらい教えてくれてもいいのに。
思いっ切り私はしかめっ面をするが、加藤君はケラケラと笑って自分の仕事へと戻って行った。
あくまで教えるつもりはないらしい。
一切こっちを見ないんだけど。
言いたくないなら仕方ないけどね。
経って欲しくないのに、時間は過ぎて行く。
刻一刻と葛木さんとの待ち合わせ時間に近付いている。
自然と私は溜め息が増えていたらしい。
「フロントは接客業だけど」
「え?」
急に加藤君にそう言われて、私は彼を見た。
加藤君は呆れた顔で肩を竦めている。