完璧な彼は、溺愛ダーリン
どうせ、最初から映画に行くつもりなかった。
それなら加藤君と出かけたって問題ない。
私は葛木さんの事、好きなわけじゃないし。
これでいいんだ。これで。
加藤君との約束を取り付けた後は、少しだけ気が楽になった。
予定があるから行かなくていいんだ。
そう自分に言い訳出来たから。
「お疲れ様」
遅番と交代して仕事をあがった私と加藤君。
「お疲れ。外で待ってるよ」
「了解」
加藤君はそう言うと、荷物を持って男子ロッカーへ向かった。
私も女子ロッカーへ向かい、着替えをする。
ケイタイを取ろうとポケットに手を突っ込んだ時、さっき葛木さんからもらった名刺に触れた。
そっとそれを取り出すと、私はじっとそれを見つめる。
“オレの電話番号”
そう書かれた下にある葛木さんの連絡先。