完璧な彼は、溺愛ダーリン
「ちょ、ちょっと加藤く……」
そこまで言ったところで、
「三石さん!」
そう、大きな声が聞こえた。
その聞き覚えのある声に、心臓が飛び出そうになった。
どくんどくんと鼓動が速くなる。
「待って」
加藤君が掴む腕とは反対の腕を掴んだ人物。
「……葛木さん」
スパダリ。葛木さんだった。
私は息をするのも忘れ、彼の顔を見つめていた。
すぐ後ろで盛大な溜め息を加藤君がつく。
「……しくじった」
加藤君が私にだけ聞こえる様な声で呟いた。
「同じバイトの子だよね。三石さんの彼氏?」
険しい顔をした葛木さんが私の腕を掴んだまま尋ねる。
「現時点では彼氏ではないです」
スッと私の体を後ろに持っていくと、加藤君が庇うように前に立った。
現時点ではって、今後なるみたいな言い方。
加藤君の考えている事がわからない。
思考がうまく回らなくて、私はこの状況についていくのに必死だった。