完璧な彼は、溺愛ダーリン
「本当に、どうして私なんですか? 私、葛木さんとあまり話もした事ないし。
それなら栞、……あ、日下さんの方が余程話しているじゃないですか」
そう言うと、葛木さんは少しだけ驚いた様子を見せたけどすぐにニッコリと微笑んだ。
「何だろうね、初めて見た時からこの子の喋り方とか、笑顔が好きだなって思っちゃったんだよね」
「初めて……?」
「うん。初めて見た時からだよ。
仕事に慣れていなくて、緊張しながらも一生懸命な姿が初々しくてさ。可愛いなって」
「……」
何も言えなかった。
葛木さん、本当に優しい顔と口調でその時の事を話すんだもん。
彼の目にはそんな風に映っていたんだって思ったら、恥ずかしくてだけど嫌な気もしなくって。
「それから、俺は三石さんとジムで会うのが楽しみになっていたんだよ。
いない日はガラにもなくがっかりしてさ。
どうしてももう一歩進みたかったけど、中々きっかけがなかったから。
映画のチケットだって、実はもっと早くから渡そうと思っていたんだ。
でも、渡せなかった」