完璧な彼は、溺愛ダーリン
「少し肌寒いね。雨降ったのかな、地面濡れてる」
外に出るなりそう言った望くんは、「寒くない?」と尋ねて来る。
それに笑顔で首を振った。
「大丈夫。上着持ってきてるから」
「準備いいね」
「折りたたみ傘までは持ってきてなかったから、止んでてよかった」
「電車混んでるよね。ムシムシしてそうだなあ」
それを想像しているのか、望くんがしかめっ面をした。
確かに混んでそうだ。
私の帰る方面は特に。
望くんの最寄り駅はどこなの?と、尋ねようと思った時。
「三石さん!」
私を呼ぶ声がした。
その声に一瞬、心臓が止まったかと思った。
恐る恐る、声がした方に視線を向ける。
そこに立っていたのは、葛木さん――――と、栞だった。