結婚したくてなにが悪い?!

オリエンテーション会場である保養施設の駐車場へ車が到着すると、大田さんは、「やるしかないか…めんどくせぇーけど?」と溜息を吐いた。

え? まだ諦めてなかったの?

呆れると同時に、私も溜息が出る。
私の溜息は彼に対してもあるが、若い男女が車から降りて来たからである。あの子達が、うちの研修を受ける子達でないことを祈った。

オリエンテーションの開会式が始まり、会社の説明や重役紹介が行われ。
そして私達講師の紹介も行なわれる。この時必ず一部の浮かれた者達からざわつきが起こる。

誰が、どこの部署の人間か気になるのだろう。
特に大田さんの様な見映えのする人が居る時は、ざわつきも大きくなる。
そして私の名前もざわつかせる原因のひとつだ。深田恭子と紹介され、ざわつき、彼等は事前に渡された手元の資料へと目を落とし、同姓同名と知る。そして笑いが起こる。

「今年も人気あるわね?」と、近くに居た人事の小宮さんから笑いを堪えた嫌味を言われる。

これも毎年の事だからなれてる。
新人君達に笑われようが構わない。構わないが、この人、小宮さんは社会人としてどうかと思う。

そして、今年はグループ親会社の社長の息子が来ているらしく、新人君達だけで無く、私達講師の中でも浮足立っている者がいる。

「ねぇ深田さん知ってる? 王子ってまだ独身なんだって?」
「王子…?」





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