結婚したくてなにが悪い?!

彼女が言うのは社長の息子の事らしい。

うちのホテル(会社)、サクラグループの総帥には二人の息子がいるらしい。そのうちの次男が、今、話題に上がってる人で、名前は、桜花崎 穣。

就活中に何かの雑誌で総帥と一緒の写真を見たことがある。
可愛い男の子だった気がする。

「ねぇーどの人だと思う?」
「さぁ?」
「え? 深田さん興味無いの?」
「無いですね?」
「そうなの? 本社の同期の子に聞いたんだけど、全然偉ったところ無くて、笑顔がステキな優しい王子様らしいよ? あー私も一度でいいから、王子様の笑顔見てみたいなぁ。」

王子様…?
確かに誌写真(あの頃)も可愛い顔だったかなぁ…
私は遠い昔の記憶の探り、思い出す。
変わってなければ、確かにみんなが王子って言うのも分かる気がする。

だが、私の聞いてる話とは少し違う。
桜花崎 穣。サクラグループ総帥の次男坊。その地位は親の七光りだけでなく、実際仕事の出来る男らしい。部下への要求は厳しく、外見の甘さと違いミスは絶対に許さない。
これまでも、会社の為に必要の無いと思うものは全て切り捨てる冷酷非道との噂を聞いている。どちらが本当の姿なのか、私には知る由も無い。
知ったところで、私には関係ない。

「王子って27歳で、まだ決まった人も居ないらしいよ? 私達にもチャンス有るよね? この2週間で私の運命決まるかも?」

運命が決まる?
いくらハイスペックな男(ひと)を狙っていた私でも、さすがに王子は雲の上の人だと思う。
まぁあなた達が夢見るのは自由だから何も言いませんが、ただ仕事で来ていることだけは、忘れずに、せいぜい頑張って下さい。

浮かれる彼女に冷ややかな視線を送り、会場へと視線を戻した。




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