結婚したくてなにが悪い?!

やっぱりやめておけば良かったかな?
仏心なんてだしても、彼等に伝わらなきゃ意味無い。

「あの…手伝いってなんですか? 俺一人でも良かったら手伝いますけど?」

背後からの声に振り返れば、さっきの新人の中の一人だった。

え?
戻って来たの?

「手伝って欲しい事なんて無いわ? ただ貴方達が、いつまでも学生気分でベラベラ噂話してるから…」
「え?」
「あのままじゃ、なに言い出すか分からないでしょ? あのエレベーターには他の教官も居たのよ?」
「すいません…」
「現場では、いつ何処でお客様に見られてるか分からないのよ? いまここ別館にはお客様は居ないけど、なんの為にここまで来て研修受けてるかよく考えなさい?」
「はい。 すいませんでした…」
「君、名前は?」
「真野です。 真野弘樹です。」
「真野君、君達はまだ正社員じゃない。このオリエンテーションが終わっても、3ヶ月間は見習い期間なのよ? その間はホテルマンになれるかのお試し期間。 ダメなら他の関連会社に移動になるわ?」
「え?…」
「オリエンテーションに参加出来たからと言って、ホテルマンになったと思わない事ね?」
「はい…」彼は俯き加減に返事をした。

「でも、戻って来た君には期待してるわ?」
私の言葉に彼は顔を上げ、ぱっと顔を明るくした。

「期待に添えるよう頑張ります! 有難うざいました!」
活きよいよく頭を下げる彼に頬が緩む。

「それから、俺じゃなくて私!」
「え?」
「上司相手やお客様には、俺ではなく、わたし、わたくしが正解!」
「はい!わたくし、肝に銘じておきます。」

彼はこの研修で教わったとても綺麗なお辞儀をして、その場を離れていった。

真野君か…
きっと彼は良いホテルマンになるわね?

私の話を真っ直ぐ聞く、彼の素直さに期待を込め、彼の背中にエールを贈る。

がんばれ!




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