結婚したくてなにが悪い?!

ホテルマンの仕事は報われる事ばかりではない。今回の様に平田マリは通常の仕事をした。ちょっと気遣いが足りなかったが、しかし、私達ホテルマンは、お客様の間違いを責める事はしない。

私達の仕事は、お客様がホテルにいる間、気持ち良く過ごして頂けるようにお手伝いさせてもらう事。私達が、どんな想いで仕事をしていようが、お客様には関係ない。

今回の様に勤務時間外にまで、ゴミまみれになっていようが、それをお客様が知ることは無いだろう。それで良い。それが私達の仕事なのだ。

私達が長谷部様の部屋を出て、廊下を歩き出した時、後ろから「有難う」と声が掛かった。振り返れば、長谷部様が微笑み頭を下げて下さった。

お客様の “有難う”と言ってくださった一言で疲れが飛ぶ。私達は再び頭を下げその場を後にした。

「先輩…有難う御座いました。」と瞳を潤ませる平田マリに「うん。お疲れ様!」と云う。
そして私はよく頑張ったと、平田マリの頭をクシャクシャに撫でる。

「先輩! まだ手洗ってない! ばっちぃー!」
「アハハハ、ホントだ! ばっちぃー。」

逃げる平田マリを追いかけ、報告書を書くべく事務所へ向かった。




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