結婚したくてなにが悪い?!
高校生の頃は恋って、楽しいものだと憧れて、苦しくて涙しても、凄く素敵なものだった。
「最近どう? 恋してる?」
宣美は昔から何故か、恋愛には消極的な所があった。
「恋ね…今は男は要らないかなぁ…私には仕事があれば良いわ?」
「出た! 宣美の仕事が恋人宣言!」
「別に仕事が恋人なんて思ってないよ? ただ、充実した日々を送ってるから男が居なくても良いかなって…」
「えー寂しくない? いくら仕事が好きで充実してても、たまには人の肌の温もりほしくならない?」
「…たまにこうして恭子に抱いてもらえれば良い!」
抱きつく宣美を「高いワイン溢れるから!」と言って押し退ける。
「だって面倒そうだもん! 男の為に頑張って化粧して着飾ってさ? コジャレたレストランでフレンチ料理を小さな口で食べてるより、大衆居酒屋で焼き鳥食べながらビール飲んでる方が楽じゃん?」
「確かにそうかも…」
「若い頃はさ…セレブ婚にも憧れたし、ハイスペックな男と結婚したいなんて夢みたいな事言ってたけど、現実はそんなもの身近に無いじゃん?」
「キクさんから紹介はあるんでしょ?」
キクさんとは、宣美が勤める会社の社長で、宣美の飲み友達。いや、飲み友達で、会社の社長?
「うーん…でも、セレブはセレブのお付きあいが有るだろうし、一般人の私はダメだわ! 多分価値観違いすぎて疲れると思う?」
「セレブの中にもキクさんみたいな人居るんじゃない?」
「キクさんは好い人だけど、あの人もたまにおかしなとこ有るから? 焼き鳥やに黒塗り高級車で乗りつけるなんて、考えられないことしてるじゃん? 兎に角ある程度妥協して、義理のジジババの介護を覚悟して結婚するか、老後の心配しなくて良いように仕事して蓄えるしかないでしょ?」
「そうだけど…なんかそれも寂しくない? あっさっきも話したけど、私、今度エグゼクティブフロアの担当になる事になったから、もし、仕事関係でご要望が有れば声かけて? ある程度融通聞くからさ?」
「え? じゃ、恭子はセレブ婚無きにもあらずじゃない?」
「アハハどうかな? お客様は、あくまでお客様だから…」