結婚したくてなにが悪い?!
「ようこそサクラホテルへ、本日はお一人でいらっしゃいますか?」
「いえ…後から妻が…来ることになってるんですが、私はこう言うところ結婚式以来で…」
「失礼ですが結婚式は当ホテルを?」
「はい。30年前になりますが、式の後1泊しまして…結婚記念日には、またここに泊まろうと言っていたんですが、仕事が忙しくて…一度も連れてくることが出来ませんでした…」
30年前にお泊り頂いて…
「恐れ入ります。お名前お伺い出来ますか?」
「真野と言います。息子が今年から、こちらのホテルで働かせていただいております。まだ研修中なんですが、その息子が真珠婚式のプレゼントだと言いまして…」
へー息子さんか…
素敵な話だな…
私も両親が居たら、お祝いしてあげたかったなぁ
「そうですか、ご立派なご子息ですね? そんなご立派なご子息と働けて私共も光栄です。」
「ホテルマンとしてはまだまだでしようが、どうぞ息子を宜しくお願いします。」
そっか、あの真野君のお父さんか…
真野君が素直なのもわかる気がする。
「すぐお部屋にご案内致しますので、此方でお座りになってお待ちいただけますか?」
私は生田さんにデーターの確認をして貰い、無理をお願いした。
「真野様お待たせ致しました。お部屋へご案内致します。」
お客様を案内してエレベーターで上へあがる。
「あの…息子が予約してくれたのはスタンダードタイプと聞いてますが?」
「はい。本日は30年前にお泊まりいただいたお部屋が丁度空いておりましたので、そちらへご案内致します。」
「いえ、でも…」
「30年前とは改装して内装は変わっていると思いますが、気分だけでも思い出して頂けたらと思いまして、当ホテルからの御祝いとさせていて頂けませんでしょうか?」
「ありがとうございます…妻もきっと喜んでくれると思います。」
「後程、お食事は、ルームサービス担当の者がおもちしますので、それまでごゆっくり、おくつろぎくださいませ。」
私は失礼しますと部屋を出た。