結婚したくてなにが悪い?!

帰ろうとしたが、やっぱり少し飲んで帰ろうと思い直し、エレベーターのボタンを押し改めバーに寄った。

バーに入ると心地良いピアノ演奏が聞こえる。私はカウンターの端に座りドライマティーニを頼む。店内には、語り合っている人や物思いにふける人、それぞれがアルコール片手に楽しいひとときを過ごしている。

「お待たせしました。」と、差し出されたドライマティーニ。
聞き覚えのある声に顔を上げれば、見覚えのある顔。

「なんであんたがここに居るの?」
「仕事だから?」

あっ!どこかで見たと思ったら、先週通用口で若い子達が騒いでた人だ。
カッコいいだとか、メガネが似合うとか言ってたわ!

身内(社内)の人に興味の無い私は、チラッと見て素通りした。

その時、新しいバーテンって言ってたっけ?
へぇー、バーテンダーか… 

暫くその男を見ていたが、高身長でルックス良しときたら、女性は誰もが放っとかない様だ。
お客様だけでなく、よく見れば、仕事あがりのホテルの従業員の女の娘まで、彼目当ての様でとても賑わっていた。

彼はカウンターに座る女性客へ、カクテルを作り差し出す時、少し口角を上げ、メガネを中指で上げる。すると女性客からは悲鳴にも似た歓喜の声が上がる。

彼奴、どうしたら女が喜ぶか知っててやってる。
絶対計算してる!
小狡い奴!




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