結婚したくてなにが悪い?!
大田さんから独り立ちして、初めて私が受け持つお客様は、桜花崎穰様だった。
昨日、『研修期間は終わりだ』と言われたのに!
これはテストなの!?
そりゃー新人は、3ヶ月の研修期間が終わったら、最終テストがあるよ? でも…私は会社の部署異動の辞令が出てじゃ無いの?
バトラーへの異動にも最終テストがあるなら、言っといてよ!? 心の準備ってものが、あるじゃ無い!
今更、何を言っても仕方ない。やらなきゃいけないなら、やるだけだ。

「本日はわたくし、深田恭子が担当させていただきます。まだ、未熟ではありますが、精一杯お世話させていただきますので、なんなりとお申し付けくださいませ」

「深田…恭子さん? …同姓同名なんだって?」

私の名前を聞いてクスクスと笑う失礼きわまりない男。桜花崎 穣。
この人、新人研修で聞いてた人と同じ??
イケメンはイケメンだと思うけど、なんか聞いてた印象と違う。ちょっと人を小馬鹿にしてない?

「はい。同姓同名です。」
「歳いくつ?」と、まるで子供にでも聞く様に軽く聞いてきた。

はぁ? 女性に歳を聞くか!?
それも自社の社員に!?
「31です…」
「結婚適齢期過ぎてますよね?」

う"
溝内にジャブ…
ってこんな感じ?

「ですね? アハハ。これセクハラだと思いますが?」
笑って返して居るが、今の私の腹わたは煮えくり返ってる。
それ以上言ったら訴えるぞ!?
怒りを押さえ、笑いながらも意思表示を伝える。

こいつ…
総師の息子…いや、お客様じゃ無かったら、殴ってるとこだぞ!?

落ち着け…
私はバトラーなんだから
腹が立とうが、耐えなくてはいけない。
今はこの人に使えるのが私の仕事。

今日明日の間だけだ!
頑張れ、私!

「歳はいってますが、僕は可愛い方だと思いますよ?」

31の女に何が可愛いだ!?
馬鹿にすんな!!

「…ありがとうございます。」

部下…バトラーに社交辞令??
いや、セクハラで訴えられないように、ここで点稼ぎ?
わざわざ、バトラーの名前や、歳聞いて何が言いたいの?

「どういった趣旨で、お話しされてるかわかりかねますが?」
「んー貴女と仲良くなるため?」
はぁ!?
「研修であなたが救いの手を差しのべた新人、結局ホテルマンにはなれませんでしたね? 真野君以外は?」
「え?」
「あの場に居た者から報告をもらってまして、あなたの事はよく知ってます。大株主のお孫さんの件も、真野君のご両親の件も全て報告受けてます。」




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