結婚したくてなにが悪い?!
昼食を済ませ、再び桜花崎様の部屋へ伺うと、桜花崎様は「紅茶が飲みたい」と言われ、私は部屋に隣接するキッチンで、紅茶をお淹れしてお出しした。
しかし、
「いらない下げろ!」
一口も飲むことなく言われてしまった。
はぁ?
あんたが紅茶っていったんでしょ!?
糞ガキ!
しかし、私はバトラーだ。
押さえろ、押さえろ!
おまじないの様に、私は心の中で呟いていた。
「何かおきに召さない事でも、有りましたでしょうか?」
「このホテルのパドラーは紅茶のひとつもいれれないのか? 香りも無ければ温度も低すぎる!」
温度が低すぎると言われて、再度入れ直したら、今度は熱すぎると言われた。
この男ケチつけすぎじゃない!?
「3ヶ月間の見習い期間を終えて、それでこの程度の事しか出来ない? やはりホテル部門は無くすべきだな?」
えっ!?
ホテル部門を無くす?
「ちょっと待ってください! ホテル部門を無くすって、サクラホテルを無くすって、ことですか!?」
「ああ、その通りだ。 新人の教育にどれだけの経費がかかってるか君は知ってるか?」
どれだけの経費…
そんなの私には分からない。
でも、お客様に満足頂くために、必要な期間であり、必要な経費だと思う。
「紅茶を上手く入れれなかったのは、私の勉強不足です。でも、新人教育は必要なものです!一度教えて直ぐに出来るものではありません! お辞儀ひとつをとっても、頭を下げる角度、手の組み方、なんどもなんども、練習して身に付けていくものです!」
「なら、出来る者だけを雇えば良い! 今は、専門学校もあるからな!? そこから選抜してくれば、経費も少なくなる。」
はぁ??
「そんな簡単なことでは…」
「簡単だろ? 出来ないものは切り捨てる! それだけだ。 オリエンテーションで2週間の新人研修を行ってるんだ! 即戦力にならなければ切り捨てる!」
「では、貴方がやって見せてください! 2週間のオリエンテーションと同じことを! そして2週間後、審査を受けてもらう? あなたが全て出来れば、私は何も言いません。」
「分かった。2週間後、俺が合格点取れなければ、ホテル部門は残す。だが、俺が合格点を取れれば、あんたは俺の者になる?」
「はぁ? なんで、私があなたの者にならなくては、いけないんですか?」
「互いにリスクがないと不公平だろ? それとも、止めるか? 敗けを認めて?」と、桜花崎様は、バカにしたように鼻で笑う。
「分かりました! やりましょう?」