結婚したくてなにが悪い?!

翌日から桜花崎様と私のオリエンテーションが始まった。始まったと言っても、保養施設で行うわけではなく、ホテルで滞在しながら、私が講師となって、マンツーマンで行う。
私は朝、4時に出勤し、5時に桜花崎様を起こし、一緒にホテルの外周を1時間走る。

その後、朝食を済ませた後、立ち姿勢に、挨拶のし方、言葉遣い。それからトイレ掃除。浴室や洗面所の水回り、鏡の汚れや曇り、水滴ひとつ残らないようにと教え、部屋の隅々まで掃除してもらう。そして新人が苦労するベットメーキング、シワひとつ無いように行ってもらう。
何度と、このまま総師の息子に、ここまでさせて良いのかと悩んだが、サラクラホテルを無くしたくない。との思いで、私はオリエンテーションを続けた。

そして私も、先日、桜花崎様に上手く紅茶を入れれなかった悔しさから、勤務時間外に、紅茶の入れ方を大田さんに教えて欲しいとお願いした。その他にもパドラーとしての私のレベルアップの為の指導をお願いしたのだ。

「教えるのは構わないが、俺も時間外勤務になるから、手当てを貰わないとな?」
「え?手当て…お金ですか?」
「いや、流石に元教育係の立場で金は貰えないから、30分毎にキスを貰う。」
「えっ? どうしてキスなんですか!?」
「疲れた体に癒しをってところだ。口紅の返還もかねて?」

訳わかんない!

「それってセクハラですよ!」
「そっか…セクハラか…? そりゃー困ったな? やっぱり時間外勤務は止めた方が良さそうだな?」

えー…
ホントこの人、滅茶苦茶意地悪じゃん!
自分で教育する立場って言っときながら?

でも…
このままで良いの?
バトラー失格の烙印を押されたままで…
そんなの良いわけが無い!
このままだとホテルは残っても、バトラーのレベルの低さが露見する。

「分かりました!キスなんて海外じゃ挨拶ですからね?感謝のキスなら差し上げます!」




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