結婚したくてなにが悪い?!

「もう良いですよね?」
「待て!」

ポットを持とうとした手を弾かれてしまった。

痛っ…

「もう色出てますって! 早くしないと出すぎになるでしょ?」
「茶葉を驚かせないように、ポットに手を添え水平に横に円を描くように、そしてすーっと下ろして、また持ち上げる。茶葉と一緒にリズムをとるように…」大田さんは実演してくれた。

この人何やらせても、様になる人だなぁ… などと見惚れてしまう。

ゆっくり蒸らし
そーっとポットを扱う。
そして、カップに注ぐ時も静かにゆっくり…

簡単そうに見えて、なかなか難しく、大田さんに手を添えて貰いながら、何度も教えてもらった。
ポットから伝わる熱と、密着する大田さんから伝わる熱に、私の体温は急上昇する様だった。

「一人で淹れて(やって)みますので、少し離れてくれますか?」
「どうした顔赤いぞ? 興奮したのか?」
「違います! 大田さんの息が耳元に当たった擽ったくて、集中出来ないの!」
「それを感じてるって言うんだろ?」
「言わない!」

その後も大田さんに教えて貰った通りに淹れるが、どうしても大田さんが入れてくれた紅茶と私が入れた紅茶には何か違う気がする。

こりゃー毎日練習だな?




< 139 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop