結婚したくてなにが悪い?!
ドライマティーニを飲み干し、ピックに刺さったオリーブをグラスの中で転がす。
次、なに飲もうかなぁ…
すると、「俺から」と、囁くように差し出されたカクテル。
「はぁ?」
「今日、誕生日でしょ?」
こいつにご馳走になる謂れはない!
ってか、なんで私の誕生日知ってるの?
「勿体無いから飲むけど、ちゃんと自分で払うから!」
男はフン!と鼻で笑い、「可愛くねぇの!」と呟いて離れて行った。
可愛くなくて悪かったわね!
だからって、あんたに迷惑かけてないでしょ!?
放っとけっちゅうの!!
カクテルに口を付ければ、爽やかで飲みやすい。
「え?…ウォッカ…」
(ウォッカマティーニ。ジンの変わりにウォッカにベルモットを加えたものに、レモンピールが浮かべられ、清涼感がある。)
「その方が飲みやすいでしょ?」
居なくなったと思った彼が、いつの間にか戻って来ていた。
「私の事は放っといて貰って構わないから、あちらのお客様のお相手したら?」
少し離れたカウンター席に座る女性客達の視線が痛い。