結婚したくてなにが悪い?!
約束の2週間が経ち、総師の後継者と言われる桜花崎様の今日の結果次第で私の運命が決まる。そして、そこにはホテルの存続か否かも含まれている。
ああ、神さま…どうか桜花崎様が合格点を取らないようにお願いします。
おかしなもんで、毎年行われる審査会では新人が一人でも多く合格して、正社員に成れる様に願うのだが、今回ばかりは、合格して欲しいとは願えない。
確かに桜花崎様は頑張っていらした。ベットメーキングも、最終日である昨日は驚くほどの進歩を見せていた。
現状の実力が発揮できれば十分合格点を取れるだろう…
でも、それは私の敗けを意味してる。そしてこのホテルが無くなることを…意味してる。
私が大好きなこのホテルが無くなる…
どうすれば良い?
まだ私に何か出来ることはある?
審査会の審査員には、各ホテルからフロントマネージャーが呼ばれ、井上さんは勿論、バトラーからは大田さんと、ハウスキーパーからは小野キャプテン、そして、桜花崎様の希望で私も審査員として特別参加する事になった。
各ホテルから来たマネージャー達は、総帥の息子である桜花崎様が審査対象者と知り、驚いていた。そんな中、桜花崎様はこう言った。
「今回の審査に僕の地位立場は気にせず忌憚なく、通常通り審査して下さい。」
忌憚なくと言われて、どれだけの人が通常通り審査出来るのだろう…
多くの者が戸惑っているなか、井上さんが驚くことを言った。
「こうおっしゃっているのですから、私達は通常通り審査しましょう? そうでないと私達も部下達に示しがつきませんし、彼もこれから上に立つ立場として、ここで手心を加えて貰ったと知れれば、今後、彼が恥ずかしい思いをするでしょうから?」
凄っ…
そこまで言っちゃいますか?
でも、そう言う所がカッコ良いんだよなぁ…
お陰で、皆んななんの危虞もなく、審査出来るだろう。
じゃ、私は?
負けたら桜花崎様の者になるの?
最近芽生え始めた気持ちを抑えて…?