結婚したくてなにが悪い?!
桜花崎さまは完璧にテストをこなされた。
凄い2週間であれだけの事が出来るようになるとは…
私の負けだ…
完敗…
その夜、私は桜花崎様の部屋へ向かった。
今までの言動を謝り、なんとかホテルを残してもらえるように、土下座でもなんでもしてお願いするつもりだった。
それが、私に出来る、ただひとつの方法だと思った。
紅茶をいれ、「2週間お疲れ様でした…」と桜花崎様へ労いの言葉とともにお出しする。
「うん!美味しい。随分練習された様ですね?」
「あの…桜花崎様!ホテル…」
懇願しようとする私を、桜花崎様は右手で制した。
それは、なにも聞かないってこと?
もう…諦めろってこと?
「ひとつ貴方に聞きたい事があります。毎日、枕の固さや高さが違ったのは何故ですか?」
え?
「…それは…桜花崎様に合った枕を探っていました。私はパドラーとしてまだ未熟で、一晩では見分けられなくて…」
「そうですか…? …お陰で、今朝は気持ち良く目覚めることが出来ました。ありがとう。」
「いえ…これもパドラーの仕事のひとつですから…」
「パドラーの仕事ですか?
私はあなた達にとって敵だったのでは? 審査時のあの場で、私がホテルを無くすつもりでいると話せば、みんな合格点を出すこともなかったと思いませんか?」
「いいえ、思いません。桜花崎様がどんな立場でお泊まりになって居ようが、私にとってはお客様です。審査に関しても、皆さんが桜花崎様の考えを知ったとしても、適正な審査をされたと思います。皆さんホテルマンとしてのプライドをお持ちですから」
「面白いですね?
そこまで、損得考えず、他人のために尽くせる貴女をもっと見ていたい。僕も、もう暫くホテルマンの事、勉強させてもらいましょう?」
「えっ⁉ じゃ?」
「今暫くは、ホテルを残します。」
「本当ですか? ありがとうございます!」
「でも、貴女を諦めた訳じゃありませんよ? そのつもりで?」
え?…