結婚したくてなにが悪い?!
そんなに睨まなくても、あなた達の王子様を取ったりしませんよ?
だが、男は私の気持ちなど気に止めること無く、むしろ面白がっているようで、私の前から離れずに居る。
「ねぇ? 私ひとりで飲みたいんだけど?」
女性客からの目に居たたまれなく、離れてほしいと言っても、彼は聞き入れてくれず、離れようとしない。
「ちょっとあんた! 彼を独り占めしないでくれる?」さっきほどから私を睨んでいた女性客から苛立ちの声が上がる。
はぁ?
なんでそうなるの?
私、こいつのことなんて口説いてないじゃん!
寧ろ放っといてって言ったよね?
あんたにも聞こえたんじゃないの?
私、ひとりで飲みたいって言ってますけど!
それより、なんの面識もない人にいきなり、あんたって…大人としてどうかと思いますよ?
「彼の気を引きたくて、ひとりで飲みたいなんて言ってるんでしょう?」
なにこの女…
あまりの女性客の言い草に、驚いてしまう。空いた口が塞がらないとは、こう言う事を言うのだろう。
だが、彼は私の苛立ちを見てクスクスと笑ってる。
おい! てぇめー巫山戯んなよ!?
あ゛こんな不味い酒、初めてだわ!!
手元のカクテルを一気に飲み干すと、彼は目を見開き驚いていた。
「そんな飲みかた…」
「どんな飲み方しようが、私の勝手! もともと、カクテルは三口程で飲み干すものでしょ? こんなの1杯や2杯で酔わないから、ご心配なく!」
私は怒りを抑えつつも、カウンターに五千円札を叩き置いてバーを出た。