結婚したくてなにが悪い?!
「あっ!やっと見つけた!」
えっ? まだ居たの!?
「なにかご用ですか?桜花崎様」
彼をホテルマンとして認めたくない私は、敢えてお客様として接した。
「これからちょっと付き合ってよ?」
はぁ?
「申し訳ありませんが、わたくしには仕事が有りますので」
「そう。君の仕事だよ?」
「なにを仰ってるのか、分かりかねますが?」
「君が僕を側に置いてくれないなら、僕も考えを改めようと思ってね?」
「それは良かったです。では、本社へお戻りに?直ぐ車の手配を?」
「いや、帰らない。ほら、僕には権利があるでしょ? 賭けに勝ったんだから?」
「・・・」
「今からデートしよう? 先ずは買い物に付き合ってよ?」
「・・・私は今、仕事中ですので、ホテル(ここ)を離れることは出来かねます。」
「大丈夫、大丈夫! 恭子さんは僕の専属バトラーに戻して貰ったから?」
「・・・・」
なんなの⁉
ホテルマンとして働くと言ってみたり、今度は私を専属バトラーにもどしたから、買い物に付き合え?
どれだけ我儘なの⁉
そんな事が何時までも続くと思わないでよ?
「玄関に車待たせてるから、行こう?」
「分かりました。バトラーとして御供します。」
桜花崎様の車に乗り、いくつかのショップを回り、洋服、靴、鞄、そして指輪を買い、桜花崎様は、私を装飾した。
「私に何をさせたいんですか?」
「恋人?」
暫く車は走り、着いた場所は、立派な門構えで、大きな日本庭園のあるお屋敷。
凄い・・大きなお屋敷。
「ここは?」
「僕の実家。今日は両親に会って貰います。」
はぁ…
買い物に付き合ってほしいって言われたから付いてきたのに?
買った物は全て私の物で…
今度は両親に会えだ…?
え?
ちょっと待った!
両親って…桜花崎さんの御父様はサクラグループの総師じゃない?
じょっ冗談でしょう!?
それとも、これは自分のハイスペツクさを見せつけて女を落とす時の常套句?
いや、彼にそんな必要ある?
これだけのハイスペックなら、いろどりみどりでしょ?
じゃ、なんで私を…?
「からかうのは止めてくれます?」
「からかってないけど?」
「じゃ、なんの冗談ですか!? 好きでもないし、付き合ってもいないのに!?」
「僕は好きだと言いましたよ?」
「…だからそうじゃなくて! こう言う事は賭けに勝った負けたとかじゃなくて、ちゃんと考えてですね!? 貴方と私では立場が違い過ぎるでしょ? 私は一介のホテルマンで、貴方はそのホテルを営むグループの…」
「兎に角両親が待ってます。中に入りましょう?」
彼の両親はとても優しく、自社の社員であることも、ごく普通の家庭で育った私を見下すことなく、あたたかく迎えてくれた。