結婚したくてなにが悪い?!

「サクラホテルは私にとっても、とても大切なホテルなんです。まさか、穣がホテルを大切に思ってくれてるなんて知りませんでした。」と、お母様が嬉しそうに話す。

はぁ? 
彼が大切に思ってる?
いえいえ、大切になど思ってらっしゃらないと思いますよ?
寧ろ、ホテルを切り捨てるつもりでいらっしゃいましたよ?

「我が儘に育ててしまって…あなたにはなにかと困らせるかもしれませんが、どうぞヨロシクお願いしますね?」
「あっいえ…こちらこそ…」
あれ?…こんな返しで良いの?
「深田さん?」
「はっはいっ!」

奥さまと私の会話を静かに見守っていた総帥が口を開き、解けかけていた緊張が、再び私の体を強張らせる。

「貴方には、話しておかなくては行けないことがある。穣は私の後継者ではありません。」
え?
「父さん! 僕は長男としての立場を行使しますよ⁉」

えっ!?
長男としての立場を行使する?

「お前は何度言ったら分かるんだ!?」

穏やかな表情だった総帥の顔が一瞬にして変わった。

「貴方の息子は僕だけです!」

えっ!?
なんかすごい話になってません?
他人の私がここにいて良いの?

「あの…私、席を外した方が…?」
「いえ、穣と結婚を考えているなら、知っていて頂いた方が良いでしょう? へんに期待もたせてもいけませんから?」

期待もたせる?
どう言うこと?

「先ほども申しましたが、穣は次男です。」

でしょうね?

「戸籍上、穣は長男になってますが、穣の上にもう一人息子が居ます。」

えっ?
もしかして愛人の子?

「誤解しないでください。柊真は間違いなく私と妻の子です」

柊真?
どっかで聞いた名前…?

「俺は信じない!」
「穣!待ちなさい! 話をちゃんと聞きなさい!」

部屋を出ていこうとする穣さんを、総帥は止めたが、聞き入れず部屋を出ていってしまった。

え?…私はどうしたらいい?
ここに残って良いの?
いや、帰りたい。

「あの…」
「申し訳ない。話は戻りますが、桜花崎家では、家督を継ぐのは、代々長男と決まっております。勿論、会社も同様です。ですから、貴方にも余計な期待を持たないで頂きたい。」

え?なにそれ?
私が財産目当てで、ここに来てると?
ふざけないでよ!?




< 151 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop