結婚したくてなにが悪い?!
「お言葉ですが、それは私が財産目当てでここに来たと仰りたい様に聞こえますが⁉」
「不愉快な思いをさせたなら謝ります。ただ知って置いて頂きたいだけで…」
「知って置いて頂きたい? なんなのあなた達親子は⁉ 勝手なことばかり言って? 誰が家督を継ごうと私には関係ないし、ましてや、他人の財産なんて興味ない! 私はあなたの馬鹿息子と付き合ってないから! 勿論、結婚するつもりなんて、毛頭ありませんから! ご心配無く!!」
「え?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした総帥に、私がここに来た経緯を話す事にした。
「あなたの息子に騙されて、ここに来ただけです! それから序でに申し上げますが、あんた達の馬鹿息子はホテルを大切になど、全く思ってませんから! 寧ろ、売却するつもりでいたのに、それなのに、ホテルマンとして働きたいだのと、訳の分からないこと言って、私達ホテルで働く者への冒涜です!」
「えっ!?まさか…」
「総帥だか何だか知りませんが、親バカも大概にして頂きたいです!! いつまでもこんな茶番に付き合ってらんないわ! 私は仕事がありますので、これで失礼します!」
私は指輪を外し、テーブルへ置くと「洋服はクリーニングしてお返ししますので!」と言って総帥宅を後にした。
「クソッタレ!貧乏人を馬鹿にすんな!!貧乏人には貧乏人の意地もプライドもあんだよ!」
苛立ちをなんとか抑えつつ、最寄り駅へと歩いてると携帯が鳴った。
「もしもし?」
『今、何処にいる?』電話は太田さんだった。
「何処にって…」
総帥の家に行ったなんて言えないし…
どうしよう?
下手なこと言ったら、絶対、身の程をわきまえろって、馬鹿にされる。
じゃ、何て言えば良い?
『もういい! そこ動くな!!』
答えられずにいると、一方的に電話は切れてしまった。
はぁ?
動くなってどう言うこと?
動かなかったら、帰れないじゃん!
暫くすると後方から車が走ってきて、私の側で停まった。
えっ!?
なになに??
黒塗りじゃん!
もしかして、ヤー様??
めっちゃ怖いんですけど??
警報ベルアプリを開き、音量を最大にする。
裕人の件以来、何かあった時の為に警報ベルアプリを取り込んでいた。
まさか本当に出番が来るなんて、思ってなかったわ!
運転手席の窓が開き、男性が顔をだした。
「あ…」
「へ、変なことしようと…したら…け、警報ベル、な、鳴らしますから!」
私は携帯を、男に構え示した。
「え? あなたは深田様では、ありませんか?」
え?
どうして私の名前を?
「あの…どちら様ですか?」
運転手は私の問いに車を降りてきた。
っ!?
何かしたら鳴らすからね!?