結婚したくてなにが悪い?!
夏を知らせていた蝉も静になり、季節は秋を迎え衣替えの季節になった。
「あーやっとジャケットが着れる。」
「そんなにジャケットが嬉しいか?」
うちのホテルは夏の間、私達パドラーはジャケットを着ない。クールビズを勧めているからだ。その為、夏の間だけシャツとベストになる。
「そりゃー嬉しいですよ!」
「夏太りで醜くなった姿隠せるもんな?」
「違います! ポケットが多くなるから!」
この人は穣さんと私が結婚する事を知ってる。
そりゃー彼の家族だから、知ってて当然ではある。
結婚が決まっても、仕事に対しては相変わらず厳しいし、からかったり意地悪する事も変わらない。
どんなにからかわられても…
どんなにイジワルされても…
この人のほんとの姿を知ってるから嫌いになれない。
ううん。寧ろ最近はイジワルされることが嬉しい。以前の様にキスも、体を触る事は無くなったけどやっぱり好き…
私はこの人が好きだ…
どんどん気持ちが濃く甘くなっていく。
彼が私を職場の仲間だとしか思ってないと分かっていても、この気持ちは誰にも変えられない。
「あっ、ちょっとごめん…」
今日、飲料会社の創立記念パーティーがあり、大田さんと私はお手伝いの為、ロビーに降りていた。そこへ、男の子が走って来て、フロント前で転んだのだ。
転んだ男の子を起こし、私は声を掛けた。
「大丈夫かな? 膝が擦りむいてるね?」
擦りむいていると言っても、少し赤くなってる程度。
「痛いよー…」
「泣かない泣かない。 男の子は強いんだから、泣かないで? ほら、ア○パ○マ○の絆創膏貼ったから直ぐ直るよ?」
「お姉さんありがとう!」
「泣かなかった君には、はい、飴ちゃんあげる。もう走らないでね?」
「おねぇさんねぇ?」
「ふん! どうせおばさんって言いたいんでしょ?」
「しかし、あんたのポケットは、ドラエモ○のポケットか!?」
「ドラエモ○のポケットなら、ど○で○ドア出して海外旅行でも行きたいですよ!」
「行くか?」
「え?」
「観光じゃないが? 良い経験になるぞ?」
「・・・・」
「あっ無理か? 穣と結婚するんだもんな?」
「・・・・」
結婚…
本当に良いの?
仕事辞めて…
ううん。
彼と結婚するって決めたの!
私が結婚することで、みんなが幸せにする。