結婚したくてなにが悪い?!

穣さんとの結婚はホテルスタッフには内緒にしていたが、日が経つにつれて、内緒話はどうしても漏れるもので、多くの人の知るところとなった。

今日の全体会議の後の食堂は、まるで針のむしろ。
今までなんの害もなかった人達。顔を合わせれば、挨拶も交わしてた人達が、男一人でこんなにも態度が変わるものだと思い知らされる。

『さすが深田さん! 大人だろうと子供だろうと、男を手玉に取るのなんて簡単なんでしょね? ホント運良いよね? 新人研修では大田さんとキスしてたってきいたけど、実際は総帥の息子を手に入れちゃうんだもんね?』
え?大田さんの事、誰かに見られてたの?

『もしかして二股だったの?』
違います!

『あー深田さんならやりそう!』
私ならって、あんたは私の何を知ってるの!?

『何でも出来る人は凄いよね?』
何でもって、何を指してるのかしら?

『彼女なら男に頼らなくても、生きていけるでしょう?』
頼らなくても…
そうね? それが出来たらカッコいいかもね?

「ナニ! 感じ悪!」

一緒に居た由実が、私の代わりに怒りを露にしてくれる。

「由美そんなに怒るとシワ増えるよ?」

由美は結婚退社が決まっていて、3か月後の結婚を機に退社し、海を渡る。
由美が居なくなるとホント寂しいなぁ…

「ウェディングエステ通ってるから大丈夫!それよりどうして恭子は怒んないの!? あんなこと言われて悔しくないの?」
「言いたい人には、言わせておけばいいのよ?」

本当は悔しかった。
由美に言われる様に、なんでそこ迄言われなきゃいけないのかって思ってた。
でも、私が何かを言ったところで、彼女達には聞こえないだろう。





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