結婚したくてなにが悪い?!
穣さんとの結婚話はあっという間に、社内外にも広がり、お客様からもお祝いの言葉を頂くようになっていた。
穣さんと結婚が決まっても、私は大田さんのマンションに住まわせて貰っていた。と言うか、大田さんの荷物は完全に運び出し、完全に私の部屋になっていたのだ。
私は大田さんが何処に住んでるか知らない。
実家に帰ったのか、女の人の所に居るのか、大田さんは何も言わないし、私も聞いてない。
そんな中、生田さんからの呼び出しで、事務所へ向かった。
生田さんと話すのも久しぶりかも知れない。
ただでさえ、私との噂で大田さんには嫌な思いをさせている。
もし、生田さんと親しく話しているところを、誰かに見られたら、生田さんにまで迷惑をかけるかもしれないからだ。
事務所に入ると、女性陣から冷たい視線が向けられる。分かっては居たけど、流石に居たたまれない。
早く用を済ませて、自分の仕事に戻ろう。
生田さんの部屋をノックをして「深田です。」と名のる。するとドアが開いて生田さんが顔を出した。
「忙しいのに呼び出して悪いね?ちょっと中に入ってくれるかな?」
「え?でも…」
私は事務所に居た女性陣に目を向けた。
皆んな興味津々でチラチラと私達を見ていた。
生田さんはそれを知ってか知らずか、再度、部屋に入れという。流石に躊躇したが、生田さんの部屋へ入る事にした。
「君は、今や話題の人だからね? 何かと大変だろ?」
「いえ、彼と結婚すると決めた時点で、覚悟してましたから?」
「そうか…で、君を呼んだ用件なんだが、Hホテルへのインターシップの件なんだ」
「はい…」
「本当に、辞退するの?」
「・・・」
「俺はねぇ、ホテルマンは君の天職だと思ってる。」
「…有難うございます。私もHホテルに行けると聞いた時は嬉しかったです。でも・・」
「勿論、君が穣さんと結婚したいなら、辞退すべきだと思う。でも、彼と結婚することが君の意思でないなら、結婚は辞めた方がいい。」
「でも…私には・・・」
みんなの事を考えたら、私には結婚をやめる選択肢は無い。
「もしかして、穣さんから、無理難題言われての事じゃないよね?」
「え?」
「やっぱり…?」
「違います!これは私が決めたことで・・」
「インターシップの件はギリギリまで、待って貰うから、君も自分の為によく考えた方がいい」