結婚したくてなにが悪い?!
裕人も他の男と同じだった。
浮気を繰り返し、その度に『ごめん、本当に愛してるのは恭子だけだから』と、そんな言葉に騙され私は許していた。
だが、半年前、夜勤明けの裕人を部屋で待って居ようと、連絡しないで、裕人の住むマンションへ行った。 マンションはオートロックだったが、裕人に部屋の鍵を預かっていたので、そのまま鍵を使ってドアをあけた。
ドアを開けて最初に目に飛び込んで来たのは、知らない女性の赤い靴、そしてリビングからは裕人と女性の声が聞こえて来た。
それは話し声ではなく、女の喘ぎ声。
リビングの扉を開けなくても、何が行われているか想像は出来た。
でも、私はそのまま物音をたてずリビングの扉を開けた。
思った通り、ソファーで男と女が裸で激しく絡みあっていた。
私はどこかで分かっていたのかもしれない。
裕人がまた浮気をする事を。その為か、あまりショックは受けなかった。
ダイニングテーブルに鍵を置く私に、ふたりは驚いていたが、私は何も言わずそのまま部屋を出た。
翌日裕人から電話があり『会いたい時に会えないのは辛い』と言われた。
辛いのは私だって同じなのに…
『恭子は強いよな、俺は無理だわ』
会いたい時に会えないのは、仕事だもん仕方ないじゃん!
そんなの私だって寂しいし、辛いに決まってるじゃない!
それを言わないからって、私が寂しくないとでも思ってたの?
寂しいから逢いに来てなんて、可愛い事、私には言えない。
『そうね? 私は可愛い女じゃないからね?』
私はさようならと言って電話を切り、携帯のアドレスから削除した。