結婚したくてなにが悪い?!

『だからと言って、それを浮気の理由にしちゃいけないけどな?』

私は対等で居たいと思うあまり、私自身がベールを被っていたのかもしれない。

『だから、俺は…なにが言いたいかって言うと恭子には感謝してる。俺からホテルマンとしての仕事奪わないでくれて…』

「でも…」

祐人はもうTホテルのホテルマンではなくなった。

『場所が違っても、ホテルマンである事には、違いないからさ?』

「・・・」

『恭子は意地っ張りだからな?今度の相手には、かわいく甘えて、本当の自分をさらけ出せよ?』

「可愛いくなくて悪かったわね!?」

『「アハハ…」』

二人の間にはもうなんのわだかりもなくなって、ホテルマンの友人として笑っていられた。
まさかこんな日が来るなんて、あの時の私は思っても居なかった。

『あ、彼奴、大田だっけ?
彼奴もモテそうじゃん?
好きなら、ちゃんと捕まえとけよ?』

「だから、あの人とは関係無いって!」

『あっそろそろ休憩終るから切るわ?今度休みが取れたら彼奴と遊びに来いよ?案内するからさ?』

「有り難う!」

最期に祐人は「恭子幸せになれよ…」と言って電話は切れた。

私達のホテルは、一度配属になったら、余程のことがない限り部署移動することは無い。
祐人の務めていたTホテルも同じだ。

ただ、リゾートホテルや旅館などでは、人員を効率よく勤務させる為、数年間いろいろな部署を経験するところもあるらしい。
あの事件後、祐人は榛原さんの紹介で、九州の旅館へ転職し、下足番から勉強している。

がんばれ祐人!
きっといつか戻ってこれるよ?

「さぁ私も頑張ろう!」

飲みかけのビールは捨てて、生田さんから頂いた韓国語のテキストを開いた。





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