結婚したくてなにが悪い?!

頑張り過ぎって言われても
ずっとこうして、来たんだもん。
仕方ないじゃん!
甘え方なんてずっと子供の頃に忘れた。

両親が死んじゃってから
ずっとこうして来たんだもん。
仕方ないじゃん!

伯父さんや叔母さんを困らせない様に
ずっとこうして来たんだもん。
仕方ないじゃん!

従兄弟達に嫌われない様に
疎まれない様に
ずっとこうして来たんだもん。

両親が亡くなっても叔父夫婦のお陰で、何不自由のない生活が出来た。でも、私は怯えていた。叔父達に嫌われたら私は行く所がなくなる。

転んで膝を擦りむい時、どんなに痛くて悲しくても『恭子ちゃんは、強いね?』『偉いね?』の周りからの言葉に、私は泣いちゃ駄目なんだと、幼心に悟った。

だから、どんなに辛くても寂しくても泣かなかった。友達が持っている物でも、絶対に欲しがらない。従兄弟達が、オモチャを欲しがっていても、私は決して欲しがらない。

「恭ちゃんは、欲しがらないの? 偉いね?」

泣かない子供が偉いんだと思ってた
ワガママ言わない子が偉いんだと思ってた

高校の時、気になる人がいても、友達から彼を好きだと聞けば、自分の気持ちがそれ以上膨れないように蓋をして、見ないようにした片思い。

大学の時、合コンで知り合った彼と付き合い始めて直ぐ『やっぱり彼女の事が…』元カノが好きだと言われても、頑張れと背中を押した、見捨てた恋。

社会人になって、皆んなが嫌がる仕事も率先してやった。別に点数稼ぎじゃなくて、自分の居場所を作りたかった。

休みを変わってと言われれば、連勤続きでも変わった。その為に、恋人に会えなくても、寂しさは我慢した。
恋人に浮気されても責めなかった。
別れを告げられても泣かなかった。

ずっとこうして来たんだもん…

優しく、頑張るなって言われると困る。
だって…
私の中の何かが崩れてしまいそうなんだもん。

大田さんの事…これ以上好きになったらダメなのに…
いつもそんな優しい顔なんか見せないくせに
いつも意地悪な事しか言わないのに…

「優しくしないでよ…あんたなんか…あんたなんか大っ嫌い!」

我慢しきれず、いつの間にか大田さんの胸で泣いていた。
この人の胸で泣くなんて、してはいけないのに…




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