結婚したくてなにが悪い?!
叔母から連絡を貰い、久しぶりに私は叔母の家を訪ねた。
「叔母さん、用ってなに? この後仕事で、あまりゆっくり出来ないの」
「恭ちゃんにこれを渡したくて?」
叔母は私に通帳を差し出した。
わたし名義の通帳…?
「義兄さん達の保険金よ」
「え? だって高校や大学のお金にって…」
「あのひとが残してたの…恭ちゃんがお嫁に行く時に持たせるって」
「叔父さんが? でも…」
叔母が差し出した通帳は1冊だけではなかった。中を見ると、ある時から毎月預金がされていた。
「恭ちゃんが家に入れてくれてたお金よ?」
日付を見ると、私が高校に入りアルバイトをするようになってから、毎月預金してあった。先月送った仕送り分も全て預金してある。
「どうして?…私の学費や生活費…」
「子供達から学費や生活費を貰う親は居ないわ?勿論、生活が困っていれば別だけど? 息子達からの分もちゃんと貯金してあるの」
「でも、わたしは…」
私は叔母の子供ではない。
だから、バイトする様になってから、少しでもとバイト代の中から少しずつ叔母さんに渡していた。社会人になってからも、それは続けていた。お世話になった恩返しとして、少しでも叔母の生活に役立てて欲しかった。
「わたしね…ずっと恭ちゃんが気がかりだったの」
え?
「うちに来たとき、両親亡くして寂しいはずなのに全然泣かなくて…この子はまだ幼いのにって…我儘も全然言わず、いつも笑ってたけど、どこか寂しそうで…恭ちゃんに気を使わせてるんだって思ってた。 でもどうしたら良いかわからなくて…私では家族になれないのかなって…」
叔母さんは気づいていた。私が遠慮してる事も、心から笑ってない事も、全て分かっていたんだ。