結婚したくてなにが悪い?!
私は次の休みの日に穣さんに会いに行った。
「ごめんなさい…やっぱり…結婚は出来ません」
「どうして?…僕の事好きだって言ってくれたじゃないですか?」
「・・・確かに、一生懸命頑張るあなたに恋しました」
「じゃ!」
「あなたは私に無いもの沢山持ってる…お金も地位も…なにより素敵なご両親が羨ましかった。あなたなら、私が欲しかった物を全て与えてくれると思う。だからあなたに恋したの…
恋って字には下に心があるでしょ? 私にとってこれは下心の恋なの…」
私は自分の胸に手を当て、想いのままを言葉にして彼に伝える。
「結婚って、ここに心がなきゃ駄目だと思う。真ん中に心が無いと…結婚しても幸せになれない。」
私はなんて酷いことを言っているんだろう
一度は結婚の承諾までした相手に、
愛じゃなくて下心だったって言うなんて…
彼の優しさを利用して、
自分の欲望を叶えようとしてたのだ。
ましてや、彼は叔母さん達を助けてくれた恩人なのに私は本当に酷い女だ。
「恋を愛に変えればいい! 直ぐじゃなくても、結婚して一緒に居れば…家族になれば…あなたが言う下心の恋だっていつか愛に変わる。僕が変えてみせます! 僕の愛であなたを変えます!」
「…きっと…」この恋は愛には変わらない。
「あなたにとっても悲しい愛になる…だから…」
「僕がそれでも良いと言っても?」
良いわけがない。
悲しい愛になると分かっているのに…
少しでも好きになったひとに、そんな悲しい想いをさせたく無い。
「ごめんなさい…」
「そんなに兄が好きですか?」
彼の問いかけに答える事が出来ない。
もし、私が好きだと言ったら
彼を今以上に悲しませる。
もしかしたら
また…
あの人からホテルを取り上げようと
するかもしれない…